
ナリ
東京を拠点に、スモールビジネスを複数運営しています。サラリーマン時代に副業からビジネスを始め、その後独立。eBay輸出歴10年以上・最高月商1,300万円。
eBay輸出だけでなく、中国輸入・卸販売、自社EC、複数のオウンドメディア運営、リユース店舗の運営、実店舗ビジネスなど、さまざまな事業をゼロから立ち上げてきました。事業売却(M&A)は3回以上経験しています。
ナリブログでは、こうした実際の経験をもとに、eBay輸出・副業・スモールビジネスのリアルな情報を発信しています。
「とりあえず銀行に行く」は、実は一番損な選択かもしれない
開業資金の融資を考えたとき、多くの人が「まず地元の銀行に相談しよう」と動きます。
でも調べてみると、創業期の民間銀行融資の審査通過率は20〜30%程度という数字が見えてきました。
一方、日本政策金融公庫の創業融資制度は、審査通過率が概ね60〜70%台で推移しているとされています。
つまり「銀行に断られてから公庫に行く」という順番を踏んでいる人は、最初から公庫に行けば良かっただけ、というケースが少なくないわけです。
ただ、公庫が「絶対に有利」かというとそうでもなくて、融資額・金利・スピード・その後の付き合い方まで含めると、どちらが正解かはケースによって変わります。
この記事では、実数を並べながら「どちらをどんなタイミングで選ぶべきか」を整理してみました。
秘書「とりあえず銀行」って私もやりがちなんですが、そんなに通過率が違うんですか…?



正直、公庫の存在を知らずに民間銀行だけ回って「融資は無理だった」と諦めた人を何人も見てきました。知っているだけで結果が変わる話なので、ここは声を大にして伝えたいです。
まず数字で見る|公庫vs民間銀行の基本スペック


細かい説明の前に、主要な数字を先に並べておきます。
「どっちがどう違うのか」を頭に入れた上で、後の解説を読んだ方が理解しやすいと思います。
金利・融資上限・担保|3つの軸で徹底的に並べてみた


「金利が低い方がいい」だけで選ぶと痛い目を見ることがあります。
融資額の上限・担保の有無・保証人の要否など、複数の軸を合わせて見ないと判断できません。
以下に主要な比較項目を表でまとめました。
数字はあくまで目安ですが、傾向として参考にしてください。
| 比較項目 | 日本政策金融公庫(創業融資) | 民間銀行(制度融資含む) |
|---|---|---|
| 金利の目安 | 1〜3%程度(基準金利から特例引き下げあり) | 2〜6%程度(信用保証協会保証付きなら低めになるケースも) |
| 融資上限の目安 | 通常枠で7,200万円(うち運転資金4,800万円) | 制度融資経由なら自治体によるが2,000〜3,500万円が多い |
| 担保・保証人 | 無担保・無保証人の制度あり(新創業融資制度等) | 原則として代表者保証を求めるケースが多い |
| 審査の軸 | 事業計画書・創業動機・返済能力 | 財務諸表・信用情報・既存取引実績 |
| 融資実行までの期間 | 1〜2ヶ月(申込〜着金まで) | 2〜4ヶ月以上かかるケースも多い |
個人的に「意外だな」と思ったのが、公庫の融資上限の大きさです。
スモールビジネスの創業なら500〜1,000万円規模で収まることが多く、この上限なら十分すぎるほど。
民間銀行との差は、実は「借りられる額」より「審査の入口の広さ」と「実行スピード」の方が大きいと感じています。



担保なしで借りられる制度があるって、知らなかったです…!



「無担保・無保証人」という言葉、公庫のパンフレットに書いてあっても半信半疑な人が多いと思います。ただ実際には自己資金の割合や事業計画の精度を相当しっかり求められるので、「誰でも簡単に借りられる」とは思わないでほしいです。
審査で実際に何を見られるか|事業計画書が8割を決める現実
公庫の審査で最も重視されるのが「事業計画書」です。
これは、たとえばお金を友人に貸すときに「何に使うの?いつ返せる?」を聞くのと同じ感覚で、「この事業でどう稼いで、どう返すか」を数字で説明するための書類です。
公庫の審査官は毎日大量の申込を見ているので、「夢がある」「やる気がある」だけでは動きません。
具体的には以下の点を見られます。
- 自己資金の割合:借入希望額の30%以上を自己資金で用意できているかが一つの目安とされています
- 業界経験:同業種での勤務経験が3年以上あると評価が上がりやすいと言われています
- 返済計画の現実性:月商・粗利・固定費から導いた返済原資が、申請額の返済に耐えられるか
- 創業動機の一貫性:「なぜこの事業をやるのか」の説明が、数字と矛盾していないか
民間銀行はここに加えて、既存の口座取引実績や財務諸表を重視します。
創業期は財務諸表がそもそも存在しないため、民間銀行の審査が通りにくい根本的な理由がここにあります。
つまり「創業期=まず公庫、事業が軌道に乗ってから民間銀行へ」という順番が、スモールビジネスの資金調達のセオリーだと思います。



自己資金30%って、たとえば500万円借りたいなら150万円は自分で用意しないといけないってことですよね…。



この自己資金の壁が一番リアルな関門だと思います。「今すぐ開業したいけど手元がない」という人は、まずここを貯める期間を設けた方が、審査もスムーズだし返済プレッシャーも下がります。急いで借りに行っても審査が通らない、という悪循環を見てきました。
実際にいくら借りられるか|規模別の融資額シミュレーション


「借りられる額」は事業規模や自己資金によってかなり変わります。
参考として、スモールビジネスでよくある3つの規模感でシミュレーションしてみました。



EC系や副業スタートの人は200〜300万円規模の融資でも十分なケースが多いです。むしろ最初から大きく借りすぎると返済負担が重くなるので、「必要最小限を借りて実績を作り、追加融資を引き出す」という戦略の方が長期的には有利だと感じています。
「公庫は万能」と思うと痛い目を見る|見落とされがちな落とし穴
「創業期は公庫一択」という話を書いておいて矛盾するようですが、公庫にも明確な弱点があります。
事前に知っておかないと、申込後に「こんなはずじゃなかった」となる落とし穴をまとめました。
| 落とし穴 | 実態 |
|---|---|
| 審査期間が意外とかかる | 申込から着金まで1〜2ヶ月はかかります。「来月開業したい」という場合は時間が足りなくなります |
| 希望額の満額が出るとは限らない | 申請額の60〜80%程度しか承認されないケースも珍しくありません。余裕を持った申請額にしておくのが無難です |
| 事業計画書の精度が低いと一発でアウト | 数字の根拠が弱かったり、売上予測が楽観的すぎたりすると審査官に「現実を理解していない」と判断されます |
| 一度断られると再申請のハードルが上がる | 理由が不明確なまま再申請しても同じ結果になることが多いです。否決後は原因分析が必須です |
| 民間銀行との関係構築が遅れる | 公庫だけに頼り続けると、民間銀行との取引実績が積み上がらず、事業拡大時に資金調達の選択肢が狭まります |
特に「開業日が決まっているのに融資実行が間に合わなかった」というパターンは本当によく聞きます。
申込は開業予定日の3〜4ヶ月前から動き始めるくらいが安全です。



満額が出ないケースもあるんですね…。それって申請の段階で何か対策できますか?



「余裕を持った金額で申請する」のが定石ですが、あからさまに多すぎると逆に信頼を損ねます。希望額の1.2〜1.3倍を申請しておいて、削られても最低ラインをカバーできる設計にするイメージです。
こんな声も|よくある失敗・後悔パターン
ナリが実務経験や相談を通じて把握した、一般的な傾向をもとに構成した声です。
特定の個人の発言ではありません。
事業計画書をざっくり書いて提出したら、「売上の根拠が弱い」と指摘されて修正を求められました。結局着金まで2ヶ月半かかって、開業が1ヶ月ずれ込みました。計画書の精度がこんなに大事だとは思っていなかったです。
最初から民間銀行に相談したら「創業1期目は難しい」と断られて、途方に暮れていました。知人に教えてもらって公庫に申請したら通ったので、最初から順番を知っていれば2ヶ月分の時間を無駄にしなかったと思います。
公庫から600万円借りられたのは良かったんですが、内装費が予想より膨らんで運転資金が足りなくなりました。「最初の申請時にもう少し多めに借りておけば良かった」と今でも思います。追加融資の審査はまた別の話なので。
※特定個人の発言ではなく、編集部が一般的な傾向をもとに構成した内容です。
公庫が向いている人・民間銀行が向いている人
どちらが正解かは状況によって変わります。
シンプルに整理すると、こんな分け方になります。
| あなたの状況 | おすすめの選択肢 |
|---|---|
| 創業1期目・実績なし | 日本政策金融公庫一択に近い |
| 自己資金が少ない(借入希望額の30%未満) | まず自己資金を積み上げてから公庫に申請 |
| 事業立ち上げから2〜3年が経過し黒字化している | 民間銀行+信用保証協会付き融資を検討する価値あり |
| フランチャイズ加盟(本部指定の銀行がある) | 本部経由の提携融資が審査上有利なケースが多い |
| 急いで資金が必要(1ヶ月以内) | 公庫・民間ともに間に合わない可能性。ビジネスローン等の短期手段も検討(金利は高め) |
「独立したい気持ちはあるけど、どのタイミングで動き出すか迷っている」という人には、副業収入が本業の50%を超えたら独立すべきかを数字で比較した記事も参考になると思います。
融資申請の進め方|ここで躓く人が一番多いステップを先に知っておく


日本政策金融公庫への申込フローを整理しました。
「何から手をつければいいかわからない」という人は、このステップを順番に踏むだけでOKです。
なお、撤退すべき数字の基準についての記事でも触れていますが、融資を受けてビジネスを始める前に「どうなったら撤退するか」の数字を決めておくことも、同じくらい重要です。



面談って、どんなことを聞かれるんですか?準備しておいた方がいいことはありますか?



面談では「なぜこの事業をやるのか」「競合と何が違うのか」「売上が計画の半分だったらどうするか」のような質問が多いです。事業計画書の数字を自分の言葉で説明できるかどうかが鍵なので、計画書を他人に作ってもらうのは逆効果になることもあります。
よくある質問
融資申請を検討している方からよく出る疑問をまとめました。
副業収入しかなくて、まだ法人化していなくても申請できますか?
個人事業主・法人どちらでも申請可能です。ただし「これから始める事業」についての申請なので、事業計画書の精度と自己資金の準備が審査の肝になります。
公庫と民間銀行に同時に申請してもいいですか?
制度上は問題ありません。ただし同時申請の事実は信用情報に記録されるため、「あちこちに申し込んでいる」と見なされるリスクがあります。まず公庫を優先するのが一般的なセオリーです。
一度否決されたら、もう申請できませんか?
再申請は可能ですが、否決理由を解消しないまま申し込んでも同じ結果になることがほとんどです。否決後は自己資金を積み増すか、事業計画を見直してから改めて申請するのが現実的です。
フランチャイズ加盟の場合、融資は有利になりますか?
本部と提携している金融機関があれば、審査が通りやすいケースがあります。加盟前に本部の担当者に「提携融資はあるか」を確認するのがおすすめです。
借りた後に返済が苦しくなったら、どうすればいいですか?
公庫には返済条件の変更相談窓口があります。黙って延滞するのが一番悪手で、早めに相談すれば返済猶予や条件変更に応じてもらえる可能性があります。
まとめ|「どちらを選ぶか」より「いつ・どの順番で使うか」が本当の正解


調べてみて改めて感じたのは、「公庫か民間銀行か」という二択で考えるより、「創業期は公庫、事業が安定したら民間銀行も並走させる」という時間軸で考えた方が正確だということです。
民間銀行が悪いわけじゃなくて、そもそも創業期は民間銀行に「評価できる実績」がない。
だから公庫が先、というだけの話です。
個人的に一番強調したいのは「事業計画書の精度が8割を決める」という点です。
金利や限度額の差より、計画書の質の差の方がよほど審査結果に影響します。
逆に言えば、計画書さえしっかり作れれば、スモールビジネスの創業融資は意外と現実的な選択肢になります。
これからビジネスを立ち上げようとしている人は、数百万円規模の事業バイアウトを経験して感じたことについての記事も合わせて読んでみてください。
「出口をどう設計するか」を最初から意識しておくと、融資の組み方も変わってきます。













