EU向け発送でトラブル続出――その原因はIOSSにあった

ある日、ヨーロッパのバイヤーから「関税を2回も取られた」とクレームが届いた――そんな経験、eBay輸出をやっていると一度は耳にするはずです。
実は原因のほとんどが、発送ラベルへのIOSS番号の記載漏れです。
たった一行書き忘れるだけで、バイヤーが現地で余計な税金を請求され、そのまま返金対応に発展するケースが後を絶ちません。
「VATとIOSSって言葉は知ってるけど、実務でどう動けばいいか自信がない」という方のために、この記事では2021年7月に始まったEUの制度変更の背景から、今日から使える実務チェックリストまでまとめました。
秘書IOSS番号の書き忘れだけでトラブルになるんですか…?



これ、意外と「知ってるつもり」で手が動いていないセラーさんが多い印象です。制度の仕組みより先に「何を書けばいいか」を先に押さえてほしくて、この記事を書きました。
まず数字で全体像をつかもう


細かい説明に入る前に、EU向け販売に関わる主な数字を頭に入れておきましょう。



20%前後というのは日本の消費税よりかなり高いですね。
VATとは何か?消費税との違いをざっくり理解する


VAT(Value Added Tax)とは、日本の消費税とほぼ同じ仕組みの間接税です。
日本語では「付加価値税」とも呼ばれます。
EU加盟国はすべてVATを導入することが義務づけられています。
「間接税」というのは、商品の売買が起きるたびに上乗せされる税金のこと。
スーパーのレジで「税込〇〇円」と表示されるのと同じイメージで、EUでは買い物のたびにVATが購入金額に含まれています。
関税と混同しがちですが、関税は輸入時点で一度だけ発生するもの、VATは「販売が成立した時点で発生するもの」という違いがあります。
ネットショップで商品を買うと消費税がかかるのと同じ感覚、と思えば分かりやすいかもしれません。
EUでは国ごとに税率が異なり、標準税率はおおよそ17〜27%程度と幅があります(執筆時点の目安です。
最新情報はeBay公式または各国税務当局でご確認ください)。



VATと関税を混同したまま出品している方がまだ多い印象です。「関税は通関で払うもの、VATは売買時に発生するもの」この一言で整理すると、IOSS番号の役割も自然と理解できます。
2021年7月の制度変更――何がどう変わったか


以前は22ユーロ未満の輸入品はVAT免税という扱いでした。
つまり少額の商品なら税金なしでEUに届けられていたわけです。
ところが2021年7月1日にこのルールが廃止されました。
それ以降は金額にかかわらず、EUに輸入されるすべての商品にVATが課されます。
この変更に合わせて導入されたのがIOSS(Import One Stop Shop)、日本語では「輸入ワンストップ制度」と呼ばれる仕組みです。
IOSSとは、ひとことで言うと「VATを購入時点でまとめて処理する仕組み」です。
買い物のたびに個別で税関を通すのが手間になることから、プラットフォーム(eBayなど)があらかじめVATを徴収して、EUにまとめて納めるルートを作った――と理解するのが近いです。
パスポートの更新を「まとめてオンラインで申請できるようにした窓口」と例えると少し分かりやすいかもしれません。
税関で個別に止める代わりに、入口で一括処理するイメージです。



制度変更前は少額なら免税だったんですね。それが全廃されたのは大きな変化だったんでは…



22ユーロの免税枠が廃止された影響は、EU向けに小額商品を多数売っていたセラーには特に大きかったはずです。制度が変わった当初は知らずに発送していたセラーも多かったと思います。
eBay輸出セラーが実際にやること――IOSS番号の扱い方


ここが一番実務的な話です。
eBayのVAT納税者番号を持っていないセラー(つまり日本在住の個人・小規模セラーのほとんど)が知っておくべきポイントを整理します。
まず、150ユーロ未満の商品を売った場合、eBayが自動でVATをバイヤーから徴収し、EUに納税してくれます。
セラーが自分でVATを計算・納税する必要はありません。
ただし、ここで絶対に忘れてはいけないのが、発送時にeBayのIOSS番号をラベルまたはインボイスに記載することです。
IOSS番号は、eBayのセラーポータル(Seller Hub)や取引詳細ページから確認できます。
これを発送ラベルの目立つ場所、または税関申告書(インボイス)に記入してください。
| ケース | VATの扱い | セラーがすべきこと |
|---|---|---|
| 150ユーロ未満・eBay経由 | eBayが徴収・納税 | IOSS番号をラベルに記載 |
| 150ユーロ以上 | 現地の通関で処理 | 通常の関税対応と同じ |
| IOSS番号を記載し忘れた場合 | 現地で再度VATを請求される | バイヤーへの二重課税トラブルに発展 |
この表の3行目が、冒頭で紹介したトラブルの原因です。
IOSS番号の記載さえ忘れなければ、二重課税は防げます。
なお、ここで紹介したルールや金額の基準は執筆時点(2026年8月)のものです。
制度は変更される可能性があるため、最新情報はeBay公式(ebay.co.jp/info/)でご確認ください。



IOSS番号はどこを見れば確認できるんでしょう?



取引詳細ページを開くと「Shipping」セクションにIOSS番号が表示されています。SpeedPAKやCPaSSなどの配送サービスを使っている場合、ラベル自動生成の流れで入力済みになっていることもあるので、一度確認してみてください。
落とし穴まとめ――EU向け販売でやりがちなミス


VATとIOSSのルールを理解していても、実務では細かいミスが起きがちです。
よくある落とし穴を表にまとめました。
| ミスのパターン | 何が起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| IOSS番号を書き忘れる | バイヤーが現地でVATを二重払い→クレーム・返金対応 | 発送前チェックリストに追加する |
| 150ユーロを超える商品にIOSSを適用しようとする | IOSSは150ユーロ未満のみ有効。超えた場合は別ルール | 金額帯ごとに手順を分けて管理 |
| HSコードを誤って申告する | 通関でトラブル・返送リスク | 事前にHSコードを正確に確認する |
| VATと関税を混同する | 費用計算が狂い、利益計算が合わなくなる | それぞれの発生タイミングを整理する |
特に3番目のHSコードの誤りは、VATとは別の大きなリスクです。
HSコードを間違えるとどうなるか、正しい調べ方については別記事で詳しく解説していますので、あわせて確認してみてください。



このグラフは正確な統計ではなく、実務上の体感を視覚化したものです。ただ、IOSS番号漏れのトラブルが圧倒的に多いというのは、セラーコミュニティの声からも間違いないと思っています。
EU向けとアメリカ向け、売りやすいのはどっち?


ここはナリの意見を率直に言います。
初心者や小規模セラーには、まずアメリカ向けから始めることをおすすめします。
理由は単純で、アメリカ市場はeBayの流通量が圧倒的に多く、VATのような追加制度対応が不要な分、運用がシンプルだからです。
一方でEU向けには、アメリカと違うニーズを持つバイヤーがいて、競合が少ないカテゴリも存在します。
VATとIOSSの仕組みに慣れさえすれば、十分に戦えるマーケットです。
EU向け販売を米国と比較した詳しい分析は、こちらの記事でまとめています。
規制の重さと利益のバランスを判断する際の参考にしてみてください。



VATとIOSSを覚えたらEUも積極的に攻めていけそうですね。
こんな声も
EU向け販売に取り組んでいるセラーの声を集めました。
最初はIOSSって何のことか全然わかっていなくて、ドイツのバイヤーから「税金を二重に取られた」とメッセージが来て焦りました。調べたらIOSS番号の書き忘れが原因で、それ以来発送前のチェックリストに必ず入れています。
EU向けは面倒そうで避けていたんですが、仕組みを理解してからはアメリカと同じように出品できるようになりました。IOSS番号さえ忘れなければ、あとはeBayがVATを自動処理してくれるので意外とシンプルです。
150ユーロを超えるものを売るとIOSSが使えないと知らなくて、高額商品の通関でつまずきました。金額帯ごとに手順が違うというのを最初に知っておきたかったです。
※特定個人の発言ではなく、編集部が一般的な傾向をもとに構成した内容です。
よくある質問
EU向け販売・VAT・IOSSについてよく聞かれる質問をまとめました。



州税とVATの違い、混乱しやすいのでちゃんと区別しておきたいです。



州税については別記事でまとめているので、合わせて読んでみてください。EU向けとアメリカ向けで税のルールが全然違うので、最初に整理しておくと後がかなり楽です。
IOSS番号はどこで確認できますか?
eBayのSeller Hubまたは個別の取引詳細ページから確認できます。配送ラベルの発行時に自動で含まれるケースもありますが、必ず記載されているか自分で確認する習慣をつけてください。
150ユーロを超える商品を発送する場合はどうなりますか?
150ユーロ以上の商品はIOSSの対象外です。通常の輸入通関手続きとなり、バイヤーが現地の税関でVAT・関税を支払うことになります。事前にバイヤーへ案内しておくとトラブルを防げます。
eBayのVAT納税者番号を自分で取得する必要はありますか?
日本在住の個人セラーが150ユーロ未満の商品を販売する分には、eBayがVATの徴収・納税を代行してくれます。自分でEUのVAT番号を取得しなくても販売は可能です。ただし事業規模が大きくなる場合は専門家への相談をおすすめします。
州税(Sales Tax)とVATは同じものですか?
別のものです。VATはEUで課される付加価値税、州税はアメリカの各州で課される売上税です。仕組みや発生タイミングも異なります。州税については別記事で詳しく解説しています。
IOSSのルールはこれからも変わる可能性がありますか?
はい、可能性があります。EUの税制変更やeBayの仕様変更によってルールが更新されることがあります。定期的にeBay公式(ebay.co.jp/info/)や税関の情報を確認することをおすすめします。
まとめ――EU向け発送、これだけ覚えれば大丈夫


VATとIOSSの話、長くなりましたが要点はシンプルです。
- 2021年7月以降、EUへの全輸入品にVATが課される(22ユーロ免税枠は廃止)
- 150ユーロ未満の商品はeBayがVATを自動徴収・納税してくれる
- 発送時にIOSS番号をラベルまたはインボイスに記載するのがセラーの唯一の義務
- 記載を忘れると二重課税トラブルに直結する
- 150ユーロ以上の場合はIOSSの対象外で、通常の通関扱いになる
この5点を押さえるだけで、EU向け発送のトラブルの大半は防げます。
難しい制度のように聞こえますが、慣れれば手順は変わりません。
なお、EU向けか米国向けかで悩んでいる方は、EU向けと米国向けの規制・利益を比較した記事も参考にしてみてください。
また、州税についてはアメリカ向け販売で別途チェックが必要です。
州税(Sales Tax)とVATの違いを解説した記事もあわせてどうぞ。
制度の詳細は変わる可能性があるため、最新の正式情報は必ずeBay公式サイト(ebay.co.jp/info/)でご確認をお願いします。



EU向けは「なんか面倒そう」と敬遠するセラーが多いですが、IOSS番号の仕組みを一度理解してしまえば、あとはルーティンです。ぜひEU市場も視野に入れてみてください。











